それいけ!小隊長! | ■ はなとだんなのぼやき帳 ■

それいけ!小隊長!

EPISODE1x

自衛隊の雑用にもいろいろあるが、ここでは一番手間がかかり、しかも自衛隊独特のものとして半長靴の手入れを紹介しておこう。半長靴は隊員全員に貸与されている訓練用のブーツで、皮製で靴底も厚く非常に丈夫なものである。隊員は皆これをまるでピカピカであることが隊内でのステータスででもあるかのように精魂こめて手入れする。俺の例でいえば小学校時代に始めて親から買い与えられたグローブくらいに何度も何度も油を塗りこんで艶をだした覚えがある。中でも皆が争うように磨きこんでいたのはそのつま先の部分である。古参の隊員の半長靴のつま先部分など大理石のようにピカピカで顔が映るくらいに磨きあげてあったものだ。一度そこまでにする秘訣を教えてもらったことがある。貸与品の靴墨をごってりとつま先部分に付け、ライターの炎でその靴墨の表面がこげるくらいに熱した後、冷えるまで待ってからやわらかい布(これも貸与品の薄い靴下を利用していたと思う)で少しずつ小さい円を描くように丹念に磨き、この過程を何度となく繰り返すというものだった。こういった手間のかかる雑用も当然に新隊員にまわっていただろう。以前みたリチャードギア主演の「愛と青春の旅立ち」のワンシーンでギアが新品のブーツやベルトのバックルを部外者から横流ししてもらい、これを同僚の隊員に売るというシーンがあったが、まさにどこの軍隊も同じなんだと思い、思わずニヤリとしたことを思い出した)。